法人税の査定〈前編〉— 税額通知書 (PPW No.573掲載記事)
香港の日本語フリーペーパー「PPW(ぽけっとページウィークリー)」No.573号(2017年1月第1号)にKRSのコラム「法人税の査定〈前編〉— 税額通知書」が掲載されました。
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<以下、記事全文、一部PPW掲載分から追加あり>
法人税の査定〈前編〉- 税額通知書
今回のコラムでは、法人税査定の解説の前編として、税額通知書について説明いたします。(※法人税申告については、弊社ウェブサイトのブログ記事を参照ください)
税額通知書(賦課決定通知書)PROFIT TAX Assessment Demanding Tax for 20xx/xx (and Notice for Payment of Provisional Tax for 20xx/xx)(フォーム-I.R.C.1931=通知1ページ目左下に記載)
各法人が提出した税務申告書に基づき税務局IRDが査定の結果、納税が必要な場合に発行されるフォームです。P.1の査定結果とP.2の税金計算書Profit Tax Computationを確認し、問題がなければ、P.3のバウチャーPayment Voucher(請求書)に記載された期限までに支払います。支払手段は、バウチャーの裏面に記載のとおり、銀行ATM、小切手の郵送、郵便局、コンビニ(HKD5,000以下の場合のみ)など各種用意されています。この期限に遅れた場合、査定額の5%分、半年を経過した場合はさらに最大10%分のペナルティが課せられますので注意してください。
実際の通知文に注記をつけていますので、以下のポイントに留意いただきながらご覧ください。
ポイントの1つ目は、予定納税(Provisional Tax、予納)という仕組みです。香港は、日本の申告納税制度(申告と同時に納税)とは異なり、賦課(ふか)納税制度という、税務局が申告に基づき税を査定し、納税者に通知し、その後ようやく納税する仕組みを採っています。そのため、当局は企業活動からまる1年か2年遅れてようやく税金を徴収できることになります。この遅れの対応策として、前もって次年度の見込み税を徴収するのが予定納税です。この予納は、次の年度も当年度と同じ所得があるとみなして計算されます。つまり、新規に設立した会社が利益を得た場合、初めての税務申告ではほぼ2倍の納税が必要となります。逆に、利益が前年より落ち込んだ会社の場合は、前年に多めに納めた分が還付されることもあります。
2つ目は、IRDは年度によって(優遇)租税措置Tax Measureを設けていることです。2015/16年度の場合、法人税は最高HKD20,000を上限として75%減税されます。ただし、次年度も同じ措置が講じられるかは未定なので、予納の額面からは優遇分は減額されません。
3つ目は納税を2回に分けての分割払いTwo installmentsを認めていることです。ただし、この分割払いは会計年度末が12月1日~31日(D Code)と同 1月1日~3月31日(M Code)の会社に対してのみ適用され、同4月1日~11月30日(N Code)の会社は適用外(=要一括払い)です。2回払いの場合でも、期限を先延ばしできるのは予定納税額の25%分のみという計算になります。もちろん、1回目の期限までに全額まとめて納税しても構いません。
異議申し立てと再査定
税額通知書の査定結果に異議がある場合はオブジェクション(Objection)、また予定納税を留保したい場合はホールドオーバー(Holding Over:期間延長・先送りの意)と呼ばれる申し立てができます。いずれも発行日からおよそ1か月位以内に書面で通知が必要です。
この通知書ですが、早い場合には申告後2週間程度、遅いとおよそ半年後に発行されます。この時点で何も税務局から指摘がなくても、IRD側で疑義を見つけた場合は申請後7年は後から指摘が来る可能性があります。一方で、申告者側も、7年以内は税務局に再査定を依頼することができます(Section70A(1)申請)。例えば、法人税計算の誤りに気付かず申請し、そのまま税務局の査定を通過して税金を支払ってしまったケースでは、この申請により過払い金が還付されています。
後編では、これ以外の査定通知についての解説を、ホールドオーバーや再査定の申請についても、追って別の回で解説したいと思います。